絵師は、えの滲みを止めるために膠と明礬(みょうばん)を
水に溶かした混合液(ドーサ)を引いた薄い美濃紙などにアウ
トラインだけの大まかな線画を描き、彫師に渡します。その後
彫師が版木をを仕上げると絵師は色分けを行い、色分けには
朱の筆を 使い、色は文字で指定されていました。
 彫師は、その線画を版下絵とし、裏返しにして桜材の版木に
貼り付け、アウトラインのままではなく、彫師の創作で一本、
一本、きめ細かやかに線を彫って完成させていきます。こうし
て黒線の作品が出来上がると、色摺りに必要な「見当」は絵
の外側に5分(1.5センチ)の余白を作り、版木の右の隅に
「カギ見当」、下側の左端に一の字の「引きつけ見当」というの
をつけます。「見当」の深さは紙一枚の厚さです。版木が出来
上がると彫師は、ドーサを引いた薄い美濃紙に色の数だ枚数
を摺って持っていき、絵師に色分けしてもらいます。絵師から
色指定を受けとると、彫師は指定の数の色版を彫りあげて
摺師に渡します。
 摺師はドーサされた和紙を水で湿し、薄い色から順に
摺 り始めます。版木の見当に合わせて次々と色を重ね
て摺っていきます。熟年した摺師は何枚摺っても一度で
紙を置く位置が決まります。摺師は一枚を摺りあげて、
絵師のところへいき色校正をします。そこで、絵師と摺師
が納得したら、初めて本摺りにして世の中に売り出す2百
枚の作品となります。何枚もの版木からたくさんの色をぴ
たりと重ね合わせ、絵師の意図する作品を刷り上げるの
は、まさに職人技の極致と言えます。 複雑な構成の現代
の絵画表現には、浮世絵版画の技法 に加え、より現代
的な色彩のセンスも要求されます。
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